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不便な楽しみ

学生のころに買ったLPレコードが実家に置きっ放しになっていた。
それを少しずつ今の住まいに持ってきている。
まだ、実家にある枚数の方が多い。
そのレコードをやはり学生時代に買ったプレーヤで聞き始めた。
レコードジャケットサイズのリニアトラッキング方式。
TechnicsのSL-10という代物。
当時のMCカートリッジがまだ鳴っている。
実はその帯域の広さを見なおして(聞きなおして)いる。

いつの間にかデジタルに囲まれてしまった昨今。
iPodの方がよっぽど手軽だ。
しかし、ホコリ取り作業から始まる「儀式」は楽しい。
これから出てくる音への期待がある。
いくらその「儀式」を丁寧に行なっても「パチパチ」ノイズは出る。
その時、私の脳は「これはノイズだ」と認識し、それを分離する。
アナログオーディオは聴取者をも取り込んだシステムなのだ。
あえて不便なアナログを、こんな風に私は楽しんでいる。

1977年に地球を飛び立った惑星探査機ボイジャー(Voyager)。
1号と2号はそろそろ太陽系を抜け出そうとしていると新聞が報じていた。
ボイジャーには地球人類から未知の知的生物へのメッセージが積まれている。
その一つはさまざまな音楽や言語を録音した金属製アナログレコード。
ボイジャーは知的生物に発見されるだろうか。
その生物は金属盤に刻まれた情報が音というものだと理解できるだろうか。
知能の発達した生物はその再生方法を発見するかも知れない。
そして20世紀の地球人のメッセージを聞くかも知れない。

その知的生物はレコード上のゴミの「パチパチ」ノイズを聞くかも知れない。
しかし、初めて聞く知的生物はそれがノイズとは気づかないだろう。
そこがアナログレコードを聞き込んでいる私の脳と違うところだ。
いや、宇宙空間にはゴミは無く「パチパチ」ノイズは出ないかも知れない。
いや、そもそも真空で音もノイズも聞こえないというのが真相かも知れない。
地球に生まれてよかった。
空気があるから。
音が聞こえるから。

正木さん コラムイメージ

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